J2の弱小チームの実情を描いたアオアシのスピンオフ漫画「ブラザーフット」に心震える

愛媛

愛媛FCをモデルにした「アオアシ ブラザーフット」 ※若干ネタバレあり

「周りで応援している人なんて見たことない。」

「どこで試合しているのかも知らない。」

「J2って2部ってことだよ。そこで万年下位・・・。人気もない。」

累計800万部を超える大人気サッカー漫画「アオアシ」のスピンオフ漫画「アオアシ ブラザーフット」に出てくる辛辣な言葉たち。。。

「アオアシ ブラザーフット」は「アオアシ」の主人公 青井葦人のお兄ちゃん、青井瞬がJリーグセカンドディビジョン(通称J2)のサッカーチーム アスレティカクラブ愛媛(以下、AC愛媛)のユースチームへの入団を描いた物語。 

今回の物語の舞台となるAC愛媛というチームが実際に愛媛県にあるJ2のチーム、愛媛FCをモデルにしたサッカーチームだ。

「なぜ愛媛FC?」

と思われたかもしれないが、作者の小林有吾さんは愛媛県松山市出身在住の漫画家で先生は愛媛FCのファンというだけでなく、愛媛FCのホームスタジアムにアオアシのキャラクターが描かれたバナーを寄贈したり、愛媛FCの練習着の広告枠を買い取ってアオアシのキャラを練習着に付けていただいたりと愛媛FCのサポーターが足を向けては寝られないほどの大スポンサー様でこの愛媛FCと非常に縁の深い方なんです。

スタジアムにある小林有吾さん作成のパネル

そして、私も本編の「アオアシ」はもちろん読んでいますし、いち愛媛FCのサポーターとしてこの漫画は非常に興味があったので単行本を購入させていただきました。

ストーリーとしては・・・

芸術的な左足のキックを持つ少年、青井瞬は地元のプロサッカーチーム AC愛媛アカデミーへの入団テストに参加していた。
しかし、テストの最中に突然小児喘息を発症し、ピッチの上に倒れこんでしまった。

瞬は得意の左足のキックを見せることがないまま不合格となってしまう。
そして、それ以降喘息の影響もあり本気でサッカーに取り組むことはなかった。

それから5年後・・・

高校二年生になり瞬の喘息は完治していた。

その間に弟の葦人は東京の名門サッカーチームのユースに入団し活躍を続けていたが、瞬は過去の挫折からそんな葦人の活躍を素直に見ることが出来なかった。

そんな中でひょんなことから瞬は再びサッカーをすることになり、その錆びついていない左足の精度を偶然AC愛媛の関係者に見られ、瞬はAC愛媛のユースチームの入団テストに招待されることになる。

「いまさら、馬鹿げている。断るべきだ。」

自分の気持ちに真っすぐに突き進んでいく葦人とは違い、母親や家計のことを考え踏みとどまってしまう。

しかし、頭では分かっていても、なぜか決断できない。

「本当は自分はどうしたいのか?」

そんな中、瞬が出した答えとは・・・?

 

というお話。

さて、このアオアシ ブラザーフットですが作者の小林先生が愛媛FCのサポーターということもあってかJ2のクラブチームの情景がリアルに描かれています。特に第二話でAC愛媛の試合後のスタジアムのシーンを描いたシーンがあるのですが・・・

敗戦の中、会場の二酸化炭素濃度がため息で極限まで高まったスタジアムで悔しそうに悪態をつくサポーター。

肩を落として帰る家族。

そして、負けた試合でも最後まで声を張り上げてお見送りをしてくれる愛媛FCスタッフ。

テスト中に「あ、これ進研ゼミで出たところだっ!!」と叫びたくなるほどの愛媛FCサポーターにはお馴染みの光景がリアルに描かれており、じっと見入ってしまいました。

そして冒頭の言葉に戻るが、AC愛媛の入団テストを受けるか迷う瞬に、瞬が通う高校の教頭先生が言ったのがこのありがたい言葉。

「周りで応援している人なんて見たことない。どこで試合しているのかも知らない。J2って2部ってことだよ。そこで万年下位・・・。人気もない。」

「おいおい、先生!!あくまでこれは愛媛FCをモデルにしたAC愛媛はそうかもしれないが、愛媛FCはそんなことないでしょ!!」と思い、考えてみると・・・

①周りで応援している人なんて見たことない・・・私自身プライベートで愛媛FCサポーターに会ったことがない。。。


②万年下位・・・ここ5年の順位が22チーム中  2016年 10位、2017年 15位、2018年 18位、2019年 19位、2020年 21位。と基本的に下位。。。


③人気もない・・・J2観客動員数もここ5年はワースト3をうろうろ。わりとワースト1の年も多い。。。

完全にスリーアウトってところですね。。。

改めて見てみると「もうやめて!!愛媛FCのライフはもうゼロどころかマイナスよ!!」と言いたくなるほどの正論陳列罪でオーバーキル状態だった。。。

まあ、まとめると弱いし、人気もない。

「じゃあなんでそんなチーム応援するの?」

という疑問が湧いてくるかと思いますが、スタジアムまで試合見に行っても大抵負けるし、正直私も「なんで、金払ってこんなツライ思いせないかんのや。もうサポーターやめよう。。。」と思ったことも何度もあります。

しかし、次の週になると「今日こそは勝つぞ!」とまたスタジアムで愛媛を応援している。

なんというか、少女漫画でいうと「なんであんな奴好きになっちゃったんだろう・・・」っていう謎の魅力があるんですよ。

初めて愛媛FCの試合を見た時のことは非常に印象に残っており、その時は愛媛FCが超攻撃的で積極的にドリブルで勝負してガンガン攻め込んでおり3-0で快勝するという非常に面白い試合だったのですが、それよりも印象に残ったのがスタジアムに来ている人々。

家族連れ、カップル、おじいちゃんと孫、こども達。

おじいちゃんが孫にうれしそうに「あのプレーすごいなぁ」と語りかけ、孫が「うん・・・」とちょっと気だるそうだけどなんかうれしそうに答えていたり、あまりサッカー詳しくなさそうなおっちゃんとおばちゃんが、いやいやそこ行ったらオフサイドになるから!!といったところで「いけー!!」と全力で応援していたりと、普通にしてると会うこともないような人たちが集まって自分たちの故郷の代表に夢を託し、選手たちの一つ一つのプレーに一喜一憂しながら、みんなで歓声を上げて喜び合う。

そんな光景に「なんか、えぇなぁ・・・」と思ってしまいました。

そして上述したようにそんな会場の空気を作り上げているのが愛媛FCのスタッフとボランティアの方々。
帰りにも声を張ってお見送りしてくれて、「うん、また見に来よう。」と思えた。

サッカーもそうだけど、そういった人々の姿や会場の空気が私は好きだ。

今でもスタジアムの入場ゲートを抜けて、けたたましい太鼓の音の中 緑のピッチが見えてくれると何とも言えない高揚感を感じる。

また、本編中でとあるキャラクターが「Jリーガーにとって踏み台にしかならないクラブ。」と言っているが、実際に愛媛FCの選手がどう思っているかは知らない。でも、もしかしたらそう思っているかもしれない。

しかし、これまで相手チームに負けた時にお客さんもほとんどいなくなって、選手も全員ピッチを去った中で最後までピッチに座り込んで動けない選手や自分のミスで負けて悔しさのあまり一目も憚らず泣く選手も見てきた。

それがチームのためかどうかは分からない。でもそれだけ悔しがれるほど全力でプレーしてくれる選手がいるなら応援せずにはいられないですね。

もちろん勝つことは楽しい。
でもそれだけじゃないという魅力がサッカーにはあるということをこのチームを応援するようになって実感するようになりました。

そんなところもこのアオアシ ブラザーフットには丁寧に描かれており、正直心が震えてグッときました。

この漫画、愛媛FCサポーターはシンパシー感じる部分が多いというか、むしろ愛媛FCのストーリーなので是非読んでほしいし、「あっ、このキャラはもしかしてあの人がモデル!?というか本人じゃん!!」みたいな人も出てきて楽しめると思います。またアオアシ本編と同様にサッカーの描写もしっかり描かれていてサッカーファンも楽しめる内容だと思います。

そして、漫画としても非常に面白いので全方位にオススメです。

惜しむらくは1巻は非常に良いところで終わったのですが、定期連載ではないので次回がいつになるか分からないところ・・・

先生「アオアシ」の定期連載でお忙しいとは思うのですが、ブラザーフットの続きも是非お願い致します。。。

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